マザーストーリー

コロンビアのカタログや広告、製品タグなどに登場する女性。
一体誰なんだろうと、不思議に思われている人も
多いのではないでしょうか。実はこの人物こそ、コロンビアにとっての
“マザー”、コロンビアスポーツウェアカンパニーの会長 ガート・ボイル。
彼女はアウトドア界の「発明家」でもあります。今では世界中で
当たり前のように愛用されているマルチポケットフィッシングベスト。
さまざまなツールが収納できるあの便利なベストを世に
送り出したのは他でもない彼女なのです。



「もう40年以上も昔のことです。マルチポケットフィッシングベストは、
夫と彼の友人たちのために作ったんです。そう、ミシンを使って手作りで。
こんなベストを作ってほしいという、ユーザーの要望を直接聞いてね(笑)。
最初は10着くらい作ったと思います。試作品ですか? 作りませんでした。
一度でみんなの希望通りのベストを完成させましたね」



そのフィッシングベストの完成からまもなく、最愛の夫に先立たれた
ガートは苦難に立たされることになりました。

普通の主婦であった彼女が、売却寸前まで追い込まれたコロンビアを
世界のトップブランドにまで成長させた苦労は並大抵ではなかったはずです。

「何か壁にぶつかったり、苦境に立たされた時こそ、人間は
いろいろなことをより早く、より深く学べると思うんです。
私の場合がまさにそうでした。そうした苦境の中でビジネスに関すること
身に付け、実践してきたのです」




その後現在までに、ガート・ボイルはオレゴン州の実業家で
構成されている「オレゴン・エンタープライズ・フォーラム」の
「1994年オレゴン・アントルプルヌール」賞をはじめ、
数々の栄誉を受けることになります。

また「ワーキング・ウーマン」誌が選ぶ“アメリカの女性経営者
トップ50”や、「ビジネス・ウイーク」誌の1994年度ベストマネージャー
のひとりに選ばれるなど、コロンビアの成長と共に、
アメリカを代表するビジネスウーマンになったガート。

しかし広告の中の強面な“マザー”が実は優しい母の素顔を持っている
ということも付け加えておきましょう。それは彼女の
こんな言葉からも伺い知ることができます。

「お子さんが何人もいる家庭で、高いジャケットやコートは
何着も買えないでしょう。だからコロンビアでは適正な価格を
大きなテーマにしています。私はアウトドアの世界をひとりでも
多くの人に楽しんでもらいたいんです」。



広告だけではなく、コロンビアのさまざまなグラフィックに
ガートは登場しています。これは「コロンビアの製品とあなたを、
マザーはちゃんと見守っていますよ」という品質の証でもあるのです。
マザー・ボイルは笑顔で言います。

「モデルなんてご飯みたいなものです。おいしいものはすぐに
思い出せなくても、まずいものは確実に思い出すでしょう」と。
Gertrude Lamfrom Boyle (1937) Columbia's famous first fishing  vest(1960) Columbia Sportswear's  original headquarters building. Downtown Portland in the early 1900s. Columbia River